主宰からの手紙。感謝状です。
親愛なる皆様へ
遅ればせながら、
劇団ヴォカリーズ「私が殺した娼女」
無事終演いたしました。
観にきてくださった皆様、応援してくださった皆様、いつも助けてくださった先輩方、そしてついてきてくれた座組み員には感謝してもしきれません。
本当にありがとうございました!
ここからは少し、いや、かなり長くなりそうなので、お時間がある方は付き合ってくださると幸いです。
(解説というほどのものではないただの呟きですが、脚本家の解説なんてダサい!という方いましたらごめんなさい)
今回のお話は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番ハ短調,Op.18-1.という曲から連想した少女の物語に、2つの要素を合体させてできました。
1つは、アンデルセン童話「赤い靴」です。
あれです、赤い靴を履いた少女カーレンが踊るのをやめられなくなり、足を切り落とすという、怖いことで有名なあの童話です。
もう1つは、19世紀ロンドンで本当に起こった世界最初の劇場型犯罪「ジャック・ザ・リッパー」の事件。
これらの題材から、虐待され本当の愛や幸せを知らない少女が、目先の楽しさを幸せと勘違いしてダンスパーティーに行き、本当の幸せをくれるルピナスを死なせてしまう。その後エルダーに軟禁され、足を切断されてはいないけれど外に出ることができなくなったカレンのお話が、
そして、劇場型犯罪を起こして売れない女優を主人公にしようと殺害予告状を出す熱狂的なファン・エルダーのお話が生まれました。
史実に忠実に、そして童話のシーンも多いので、調べてみると楽しいかと思います。
初めて脚本を書くのにミステリー、しかも海外そして時代物という3コンボ。
自分で自分の首を絞めるような、手強い脚本でした笑笑
でも、初めて演劇を観た人も楽しめる、この舞台をきっかけに演劇に興味を持ってもらうことを目標にしていたので、ミステリーというストーリー展開がはっきりしたジャンルは書きやすかったです。
劇団名も、この目標から名付けました。
ヴォカリーズとは、歌詞がない母音で歌うクラシック曲のことです。
歌詞というメッセージではなく、曲の旋律そのものを味わうヴォカリーズのように、この舞台もテーマを理解してほしいというよりは、作品そのものを楽しんでほしいなと思って名付けました。
しかし、アンケートやツイッターを拝見したところ皆様とてもテーマをじっくり考えてくださっていて、本当に、本当に、嬉しくて幸せな気持ちでいっぱいになりました。
この作品は、「虐待の連鎖」を誇張して描いたお話です。
虐待されていたカレンが、次第にアイビーのような思考回路になっていく。
昔はカレンのようだったエルダーが、葛藤を抱えながらも次第にアイビーのような思考回路になっていく。
そうしてまた、カレンが生まれる。
その繰り返し。
誰が悪いとも言えない、悲しい、やるせない連鎖から逃れられず、苦しむカレンとエルダー、アイビーは、19世紀ロンドンに限らず現代日本にもたくさんいます。
心の叫びを上げているカレン、エルダー、アイビーは、この世に、身近なところにもたくさんいます。
当日パンフレットにも書きましたが、歌詞がないヴォカリーズって、歌詞にできない、言葉にできない思いを歌った曲だと思うんです。
カレン、エルダー、アイビーの叫びは、言葉にできないほどの苦しみ、言葉にならないヴォカリーズなんだと思います。
皆様もぜひ、身近な人のヴォカリーズに耳を傾けてみてください。
その先にはきっと、今よりも優しい世界が待っていると、私は信じます。
さて、お堅い話は置いといて!
名前の由来になった花言葉が気になるというお声が多かったので、この機会にお答えしますね!
お医者さん
エルダー → 熱狂(ニワトコの英名)
リコリス → 想うはあなたひとり
おじさん警部補
マロン → 公平(マロンは栗だと勘違いしていたためマロンと命名してしまいました。栗の花言葉です)
アンチューサ → 真実
被害者娼婦
マリーゴールド → 嫉妬、生きる(ジャックらしき人に襲われ唯一一命を取り留めたエイダという女性をモデルにしていたため)
新聞売りの少年
イリス → 使者(アイリスという花の神話から)
デイジー → 無意識
青い警部
ハイドランジア → 冷酷、移り気(紫陽花)
奥さん
ルピナス → 母性愛、あなたは私のやすらぎ、想像
カレンのママ
アイビー → 死んでも離れない
ストロベリー → 幸せな家庭
ちなみにカレンちゃんは童話のヒロインから命名。
です!
長くなりましたが、観にきてくださった皆様、応援してくださった皆様、本当に本当に、ありがとうございました!!
劇団ヴォカリーズ主宰 尾野由季
追伸
皆様への私の気持ちは、「カスミソウ」。
花言葉は照れくさいので内緒です。
はっはっは!